多摩信用金庫本店2階のギャラリー(地域貢献スペース)では現在、「スライド 芦川瑞季/宮寺彩美 二人展」を開催中です。
二人はともにリトグラフという版画技法を用いていますが、その表現方法は大きく異なります。木版画や銅版画に比べて、技法による風合いがでにくいリトグラフは、それゆえに作り手の個性をそのまま画面にすり出します。
しかしギャラリーでランダムに並べられた二人の作品を連続してみていくと、どこか親和性のようなものを感じるのも確かです。
あるいはそれは、目にうつる現実の風景を作品に落とし込むという二人の制作スタイルの共通性から来るのかもしれません。
芦川瑞季さんは、主のいなくなった廃屋、陽だまりの木立、どこかの家の花壇、など日常の中で自然と視界に入る、しかしほぼ意識されることのない光景を、ある種の共感をともなって切り取り、そこに大胆に漫画のラフのようなイメージを重ね合わせます。
この異質なモチーフ同士の重なり合いによって、忘れられた風景は、観る者それぞれの記憶の根底をノックする装置に変換されます。
宮寺彩美さんは、日本の旅先、またタイやドイツなど外国で目にした光景を、トリミングして再構成します。繊細な描写は、リトグラフによってフラットな画面に変換され、一歩ひいた旅情をにじませます。軽みのある色彩、余白の中に込められた余韻、後ろ姿の人物たち、いずれからも作者の柔らかな眼差しが感じられます。
二人のイメージは、すれ違いつつも、どこかで重なり、まさに「スライド」しながら何かを語りかけてきます。
短い会期ですので、ぜひ足をお運び、イメージのスライドをお楽しみください。
「スライド 芦川瑞季/宮寺彩美 二人展」
2020年11月2日(月)~11月28日(土)
たましん本店地域貢献スペース(ギャラリー)
〒190-8681 東京都立川市緑町3-4 多摩信用金庫本店2階
※どなたでも無料で楽しめるフリースペースです。
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